安良里、三島由紀夫「獣の戯れ」歩き ~ 宝来屋
半身不随の夫が、妻と、同居中の元部下(自らを半身不随にした青年)に自らの絞殺を依頼する嘱託殺人、そんな出来事が西伊豆の漁村で起こりました。ただし小説の中での話です。
場所は安良里、書いたのは三島由紀夫、小説名は獣の戯れです。
今年のGWは、この安良里を歩きましょう。宿泊も三島がこの小説を書いた宝来屋。初日は妻と長女、二日目は父母と長女での旅。


まずは宿に到着。昭和の映画から飛び出してきたような昔ながらの旅館。入るといきなり三島由紀夫の写真。


そしてミシミシいう階段を登って案内されたのが、まさに三島由紀夫が獣の戯れを執筆した和室。ずーっと昔子供の頃、いつも見ていたような部屋です。
まずは安良里港。
殺人事件の数日前、眩しすぎるくらいの白いブラウスに日傘を持った優子(妻)が逸平(夫)と幸二(青年)が仲良く並んで写真を撮った場所(かも)。
港から安良里川に沿って上流に向かいます。
安良里には小学校はありませんが(隣町までバスで通学)、
小学生は一杯。
元気に水遊びしています。
子供の日も近いし。
程なく龍泉寺に。
泰泉寺の和尚というのが小説の中で大きな役割を演じますが、この寺がモデルでしょうか?安良里にはもう一つ大聖寺があるので、この二つの寺が混合した架空の寺が泰泉寺なのかもしれません。
とすると、深夜に夫を殺した優子が幸二と手をつないで歩いてきたのはこの道でしょうか。
「その顔には幸福が充ち溢れ、姿も足取も自在に若々しく、二人がこれほど美しく見えたことはこれまでになかった。・・・・・二人が下りて来る姿は、まことの花嫁花婿のように見えた」
安良里川を上ると、何の情緒もない採石場と大型ダンプが目に入りますが、それは記憶から削除して、どんどん上流に向かうと、突然森の中に入り、目の前に高さ数十メートルの滝に出くわします。
神洞の滝です。
3人でピクニックに来て、優子が夫逸平の目の前で
「接吻ってこうするのよ」と言って、突然幸二と接吻した場所です。
滝から再び町に向かって歩くと、
もう一つの寺大聖寺があります。
森閑とした山の中にありますが、境内からは安良里の町と海が見えます。町全体を暖かく見守っている感じ。
津波で町が壊滅した時、津波がこの寺の前で止まったので、波切不動とも呼ばれているようです。
こちらが泰泉寺だとすると、優子と幸二が夜明けに手をつないで歩いてきたのは、この道だということになります。和尚がどんな吉報を持ってきたのかな、と思っていると、二人が口にしたのは
「逸平を細紐で絞殺したので、
自首したい。和尚、一緒に警察に行ってくれませんか」という言葉。
安良里の町は、海以外の3方を山に囲まれていますが、上述の滝と大聖寺のある奥の山を除くと、
両面が壁のような山になっており、その斜面にはお墓が一面に立っています。
まるで先祖が皆で子孫である町の人々を守っているかのようです。
かつて陸の孤島だったこの町を、今生きている人もかつて生きていた人も、一緒に力を合わせて励ましあって生き抜いてきたんですね。
小説では、優子、逸平、幸二の墓が3つ並べてこの場所に立てられたそうです。町の有力者達の大反対はあったものの、どうしても3つ並べて立てて欲しい、という、優子、幸二、二人の懇願に従い、泰泉寺の和尚は、逸平の左に優子の寿蔵を、右に絞首刑になった幸二の墓を立てたそうです。
西伊豆は夕日がきれいなことで知られます。
日は落ちて、再び漁港を散策。
丁度日が落ちるところ。
海に落ちる場所まで見に行きたい、と走り出した長女が辿り着いた漁港入口での写真が冒頭の一枚。
さて、宿に戻り
一風呂浴びましょう。
大人二人入ると圧迫感があるくらいの狭い風呂ですが、温泉。やや硫黄臭が強いかな。
それにしても、今回改めて獣の戯れを読んでみると、三島の才能には驚かされますね。これを書いた時は、まだ35才だったんですね。相反するものが言葉としても概念としても、常にぶつかり合っている緊張感が何とも言えない知的エキサイトメントを感じさせます。
このやや肩肘張ったところが、流れるような自然体の川端や谷崎と違った魅力を生み出しています。
どちらも好きですが、仏文科出身の私としては、三島の方によりフランス的思考を感じ、馴染みと同時に窮屈さも感じます。
料理は海の幸満点。
3人では食べきれないほどの刺身の舟盛りに、一人一人に、さざえ壷焼き、伊勢海老の刺身。
天にも昇る心地。
ちなみに料金は一泊二食付で9450円(450円は消費税)、
安くない?!
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